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大人が演奏したい、そして聴きたくなる吹奏楽とは・・

第22回定期演奏会(2003.06.01)プログラムより 音楽監督 柏木 利介

吹奏楽はオーケストラやジャズとは異なり、様々なジャンルの中間的な要素を持つことを特徴とした演奏形態です。最近の吹奏楽は、60年ほど前の軍楽隊のイメージはすっかり影を潜め、中高生の教育のための音楽であると考えられる風潮がありますが、ここで音楽的な観点として、我々は吹奏楽の持つ「管楽器ならではの音楽」の本質的な形成を思い、その実現に努めています。たとえば現在の吹奏楽は音楽的に確立された立場にはなく、音楽形態としては不完全な状況にあると思います。また大人が演奏したい、そして聴きたくなるようなものではない現状があります。そこでまず積極的に、吹奏楽ならではの、聴きたいと思われる音楽を発掘し、アピールしていくべきだと考えています。

今回の第一部では1951年にV. パーシケッティによって作曲された「ディベルティメント」と、1988年にD. ホルジンガーによって作曲された「春になって・・」という現代的作風による2つの曲を演奏します。この2曲の間には実に40年ほどの年月の隔たりがあるにもかかわらず、興味深いことに両極ともに、管楽器の本質的なアンサンブルの面白さを引き出すコトへの主張という、吹奏楽に対する共通のポリシーを感じ取ることができます。日本では20〜30年前頃はA. リードやR. ジェイガーのようなタイプの作曲家が好まれるとともに、オーケストラの曲を吹奏楽用にアレンジしたものを演奏する団体が多く、このような曲はあまり演奏されませんでした。特に中高生の吹奏楽団は、スウェアリンジェンに代表されるような、大人にとっては面白いと感じない、いわゆる「単なる教育的音楽」に偏っていると思われる曲ばかりを演奏し続けてきた傾向があるように思えてなりません。しかし40年の時を越え、ホルジンガーが、パーシケッティと同じ感覚・同じ観点を持って作曲をし始めたことは、我々にとっては心休まるものがあります。そのような意味も含めた上で、両者の音楽を聴き比べてくださると幸いです。

さて、「鷹吹」はアマチュア市民バンドでありながらまったく別の観点から吹奏楽を考えています。たとえば吹奏楽がオーケストラと違う点として、音の立ち上がりの速さや、管楽器がブレンドされたときの和音の色彩感がありますが、このような特色を生かせる曲をできるだけ取り上げていきたいと思っています。その一環として鷹吹では、ホルジンガーのような本格的な吹奏楽の作曲者の作品を好んで演奏するとともに、微力ながら、まったく異なった要素を吹奏楽に取り入れたいと考えています。それがジャズ・ポップスのジャンルの吹奏楽への導入です。今回は、特に第二部の後半にメイナード・ファーガソンの「フォックス・ハント」、カウント・ベイシーの「キュート」、バディ・リッチの「イン・ア・メロウ・トーン」など、4ビート系のジャズを我々独自のアレンジで演奏いたします。通常ジャズのビッグバンドは17人編成ですが、多くの色を持った管楽器を使用し、60人余りの、こういったタイプのジャズを取り入れた演奏に次なる世代の吹奏楽があるのではないかと模索しています。

いかがでしょうか。ご意見をお寄せください。