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真島俊夫さんとワインを飲んで……

第19回定期演奏会(2000.06.18)プログラムより 音楽監督 柏木 利介

最近のインターネットの普及は今までには考えられなかった効果や出会いをもたらしてくれる。鷹吹にもメイリング・リストがあって、実に42人の人達に即座に情報が伝達できるようになっている。今日「カドリール・エニワン」でヴィブラフォン・ソロを聞かせてくれるmamaの努力によってホームページも作られ、それを見た人が1万人を越える状況にもなっている。最近、団員募集を様々な新聞・雑誌に出してもあまり効果が無いようだが、この鷹吹のホームページを見て入団して来る人の割合が大変多いことも事実である。また、今までは手書きが基本であった譜面も最近はコンピュータを用いて作成されることが多い。譜面を製作することだけではなく、書かれた譜面はミディ音源を使って聞くこともできる。まさにコンピュータを用いた電子情報は「鷹吹」には無くてはならない存在となっている。

ところで昨年ある方から電子メイルを頂いた。真島俊夫さんだった。「鷹吹」は10年以上前から吹奏楽においてジャズ・ポップス系の音楽を演奏することに力を注ぎ、コンクールでもそのような曲を中心に取り上げている。しかし現在の日本ではそのような曲のアレンジを書くことができる作曲家は数人しかいない。そして中でも我々がもっとも好んで演奏させていただいているのが真島さんの曲である。その御本人からメイルを頂いたことは、驚くべきことであった。それから何度かのメイルのやり取りをさせて頂き、とうとう先週の日曜日に実際に真島さんに鷹吹の練習に来ていただいた。特に今回の定演で演奏する「ミラージュ2」「哀愁のセントラルパーク」「NSBミレニアム」という真島さんが書かれた曲の指揮を振っていただき、御指導頂いた。練習中には、ベース、ドラム、ピアノというリズム楽器の重要性を具体的に示されると共に、自らも実際にピアノを弾かれ、その違いを認識することができた。また「鷹吹」でアレンジして作った「カドリール・エニワン」についても吹奏楽のアレンジャーならではのコメントも頂くことができた。「鷹吹」が最も不得意としている、和音を作ることの重要性に関する御指摘も痛感している。

一方、休憩中のロビーでは「Nチン(3才)」が缶紅茶をひっくり返して真島さんに危うく浴びせかけそうになり、また「Mちゃん(2才)」が真島さんの飲んでいたウーロン茶を持って逃げ去りそうになり、あげくのはてに蹴りを食らわせていた。.......^o^;/.......「鷹吹」ならではのいつもの光景ではあるが、真島さんはびっくりされただろう。

「鷹吹」では、子どもをつれて練習に参加している団員がいる。練習中も10人程度の幼児がいつもうろうろしている。でも子どもたちの行動はほほえましく、みんなが「鷹吹の子」として扱っている、という心の広さがこのバンドの自慢でもある。そのうち何人かはある程度の年齢に達すると親と共にバンドに参加する例も見られ、嬉しいかぎりだ。ちょっと驚かれたとは思うが、真島さんにはそういった一般バンドの現状も御理解いただけたかと思う。

さて、練習後には真島さんと一緒にワインを飲みながら特に以下のような吹奏楽とジャズ・ポップスについて議論させていただく、という私共にとっては嬉しいひとときを過ごすことができた。

(1) ジャズの最大人数である17人編成のビックバンドと50〜60人にも及ぶ吹奏楽のアレンジの違いについて。

(2) ジャズとクラシックの中間的存在としての吹奏楽について。

真島さんの答の中で特に注意すべきことは、吹奏楽はビックバンドとは違い、吹奏楽に応じたアレンジがある、ということだった。言葉で言うと簡単で当然なようだが具体的にはかなり難しい。これは、かいつまんで言えばクラリネットとサックスなどの音のぶつかりあいを無くす点、フルート、ホルン、ユーフォニウムなどの通常ジャズのビックバンドには無い楽器は、別のフレーズを作って対処する、ということであった。僕はさらにテンションコードの各パートへの入れ方についてお聞きしたが、これは様々な作曲家で違い、いろんな方針があるということだった。「これができたらプロの作曲家になれるのですよ。そんなに一言では教えられませんね。これからも勉強してください。」と言われた。

勉強しよう。そして、今後の我々の活動に生かしていきたいと考えている。

吹奏楽ポップス・ジャズをこんなにまじめに考えて行こうというアマチュア・バンドは、おそらく日本広しと言えども「鷹吹」しかないと自負している。そして今回、真島さんのような方とお近付きになれたことを嬉しく思っている。さらに、我々のアマチュア現場としての要望は、真島さんにはさらに面白い曲を書いて頂きたい。それは新しい吹奏楽ポップス・ジャズというジャンルの音楽をさらに創造してもらいたいということでもある。また今回、僣越ながらお願いしたことは、私どもの手本になるようなプロとしての「吹奏楽ポップス・ジャズバンド」をぜひ作って頂きたいということだ。また逆に真島さんからは、吹奏楽コンクールも現在のような堅苦しい、つまり音があっているかを主に競っているコンクールだけでなく、本当に現在、吹奏楽を愛好するみんなが望んでいるのは親しみ易いポップス系統にある、ということを認識し、「吹奏楽ポップス・ジャズのコンクール」を開くべきだ、という意見には驚かされた。こういうコンクールができれば我々にとっては願ってもないことである。

ところで、真島さんに「好みのジャズ・ミュージシャンは誰ですか?」と訪ねたところ、「クリフオード・ブラウン」という答だった。逆に僕がこの問いを投げかけられたら、同じことを答えただろう。僕もクリフォード・ブラウンが大好きだ。お店の方にリクエストして、真島さんのお話と共に、いろんなTpの演奏が入ったCDを聞くことができた。有名な「....with ストリングス」は無かったものの、特にウイントン・マルサリスと、C.ブラウンの「スターダスト」の違いを、このワインの会の参加者には御理解いただけたかと思う。そして、真島さんからC.ブラウン関係のアレンジを今後やりたいということを伺った。僕にとっては、「待ってました」と言わんばかりの期待のふくらむ選曲である。これからもよりいっそう心おどるような、本格的なアレンジを期待している。

真島さんには近い将来、正式に「鷹吹」にお迎えして演奏会で指揮を振っていただきたい。また「鷹吹」のために曲を書いていただきたい、と考えている。また、そういったことができるように、「鷹吹」もさらに実力を付けて行きたいと思っている。